Column
噛めることが、健康寿命を伸ばす
2026.09.29
こんにちは!大垣市のあだち歯科医院です。
今回は「噛めることが、健康寿命を伸ばす」についてお話ししていきます。
健康寿命・・・みなさんも一度は聞いたことがある言葉かと思います。
それと似たような言葉で「平均寿命」がありますよね。
では、「健康寿命」とは何なのか、それと噛めることがどう関わるのか・・・
不自由なく食事できることは、健康寿命と密接に関わっているんです。
「健康寿命を伸ばすために、何をした方がいいですか?」
そう聞かれると、運動や食事、睡眠などを思い浮かべる方が多いと思います。
生活の基本として
- 適度な運動
- バランスの取れた食事
- 良質で時間をしっかり確保した睡眠
これらは必須と言えるでしょう。
「今はまだ40代だし、健康寿命なんて先の話じゃない?」
そう思うのも無理はありません。
今現在、体に異常を感じてないなら尚更・・・
ところが、診療室で患者さんのお口を診察していると、健康寿命を考えるうえで、意外と見落とされやすいものがあります。
それが「噛めること」です。
- 好きなものを食べる
- 家族と一緒に食卓を囲む
- 外食を楽しむ
こうした当たり前の生活を支えているのが、毎日何気なく使っている「口」です。
今回は、なぜ「噛めること」が健康寿命と関係するのか?
そして今現在歯科医院で治療している方でも、特に不自由を感じていない健常者の方も、
今からできることについて考えてみたいと思います。
「健康寿命」と「噛むこと」は、実はつながっている
健康寿命の定義を一度確認しましょう。
「健康寿命とは、心身ともに自立し、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと」
簡単にいうと「健康上の制限を受けず、自立して生活できる期間」のこと。
平均寿命だけを長くするのではなく、
「できるだけ元気に、自分らしく生活できる期間を長くしたい」という考え方ですね。
いくら長生きできたとして、介助なしに
- 食事もままならない
- トイレに行けない
- お風呂に入れない
- 着替えができない
- 歯磨きができない
- 外に出歩けない
- 簡単に転んでしまう 等々・・・
こんな状態では何のために生きているのかと考えてしまいます。
そうならないために、運動をしたり、食生活に気をつけたり、
夜更かししないようにちゃんと睡眠をとる方は多いと思います。
では、毎日の食事をするとき、最初に働いているのはどこか。
そう、口です。
①食べ物を口に入れて(捕食)
②歯で噛み(咀嚼)
③舌を使ってまとめ(食塊形成)
④飲み込む(嚥下)
当たり前すぎて意識することはありませんが、実はかなり複雑な作業を毎日繰り返しているのです。
専門的にみるとこれらの①~④はもう少し細分化されますが、ここでは割愛します。
歯科医院で「特に困っていません」と話していた患者さんに、
「硬いものは普通に食べられますか?」と聞くと、
「そういえば、最近はステーキよりハンバーグを選ぶかな」
「ナッツやあられはちょっと避けています」
「硬いものは顎が疲れるから食べなくなった」
「食べれんことはないけど、しんどい時がある」
といった答えが返ってくることがあります。
本人としては「食べられない」というわけではありません。
でも、少しずつ食べるものが変わっている。
ここが大切なポイントです。
「噛める」ということは、単に歯があるということではありません。
歯や歯ぐき、顎の関節、噛む筋肉、舌など、口全体が協力して働くことで、私たちは食事をしています。
だからこそ、今のうちから「将来も不自由なく噛める口」を意識することには意味があります。

「何でも食べられる」は、実は当たり前ではない
歯を失った患者さんから、
「1本くらいなら大丈夫ですかね?」
と聞かれることがあります。
もちろん、1本歯を失ったからといって、突然何も食べられなくなるわけではありません。
人間の口はとても器用ですから、残っている歯を使って上手に食事をすることもできます。
ただ、歯が少しずつ減っていくと、
「硬いものは避けよう」
「噛みにくいものはやめておこう」
「失った方では噛みにくいから、反対側で食べよう」
という選択が増えてくることがあります。
最初は、「今日は柔らかいものにしよう」くらいかもしれません。
ところが、それが何年も続けば、食べるもの、そのものが変わってしまう可能性があります。
例えば、肉や野菜、ナッツなど、噛む力が必要な食品を自然と避けるようになってしまう。
避けなければ、今現在噛みやすい場所でいつもの食事をとります。
もちろん、食生活は歯だけで決まるものではありません。
年齢、全身の健康状態、生活環境など、さまざまな要因があります。
それでも「自分の口でしっかり噛める」ということが、
食事を楽しむための大切な土台であることは間違いありません。
そして、噛む力を考えるときに忘れてはいけないのが「歯周病」です。
以前のコラムでも解説していますが、
歯周病は、歯を支えている歯ぐきや骨などに炎症が起こる病気です。
むし歯のように「歯そのものに穴が開く」という病気とは少し違います。
痛みが少ないまま進むこともあるため、
「痛くないから大丈夫」
と思っているうちに、歯を支える環境が少しずつ悪くなっていることがあります。
歯を長く使うためには、歯そのものだけではなく、
「歯を支えている周りの環境」も守る必要があるのです。
しっかり噛めることは、食事を楽しむこと
「健康のために、毎日しっかり噛みましょう」
と言われると、少し堅苦しく感じるかもしれません。
でも、もっと単純に考えてみてもいいと思います。
- 焼肉を食べる
- お寿司を食べる
- 旬の野菜を味わう
- 家族と同じものを食べる
- 旅行先で、その土地のおいしいものを楽しむ
こうしたことは、人生の楽しみの一つではないでしょうか。
歯科医師として患者さんと話していると、「歯を治したら何を食べたいですか?」という質問に、
意外と具体的な答えが返ってくることがあります。
「お肉が食べたい」
「好きなものを普通に食べたい」
「家族と同じものを食べたい」
歯の治療の目的は、単に「虫歯を治療する」「歯をきれいにする」だけではありません。
その先にある、「食べる」という生活においての基本を守ることも、大切な役割だと思っています。
また、噛むことは食事だけの問題ではありません。
「噛む」という動作には、顎を動かす筋肉や神経など、さまざまな体の仕組みが関係しています。
「噛める状態にしたら、3年間寝たきりの人が歩けるようになった。」
というニュースを耳にした方もいるでしょう。
そのため、口の機能をできるだけ良い状態に保つことは、
将来的な生活の質を考えるうえでも大切です。
ただし、「たくさん噛めば、それだけで健康寿命が延びる」という単純な話ではありません。
運動、食事、睡眠、社会とのつながりなど、健康寿命にはさまざまな要素が関係しています。
その中の一つとして、「自分の口でしっかり食べられること」がある。
そのくらいに考えていただくとよいと思います。

「将来も自分の口で食べる」ために、今できること
では、今このコラムを読んでくださっている読者の方、今から何をすればよいのでしょうか。
「特に問題なく過ごせているよ」
という方もいらっしゃれば
「現在治療中です・・・」
という方もいらっしゃるでしょう。
特別なことを始める必要はありません。
まず大切なのは、今ある歯をできるだけ長く使うことです。
- 毎日の歯磨きを続ける
- 必要に応じてフロスや歯間ブラシを使う
- 定期的に歯科医院でチェックする
- 虫歯や歯周病を早めに見つける
- 歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせなど、気になることがあれば相談する
どれも「健康寿命を延ばすための特別な方法」というより、歯を長く使うための基本的な習慣です。
特に歯科健診は、「痛いところを探すため」だけのものではありません。
今の状態を確認して、将来歯を失うリスクをできるだけ減らしていく。
そんな使い方もできます。
「歯医者は痛くなってから行くところ」
「怖くて足が遠のく場所・・・」
というイメージがあるかもしれません。
でも本当は、
「これからも自分の歯で食べるために、今の状態を確認するところ」
と考えてもらえたらと思います。
健康寿命というと、少し先の未来の話に聞こえます。
しかし、将来も自分の口で食事を楽しめるかどうかは、今日からの積み重ねと無関係ではありません。
10年後、20年後に、
「今でも好きなものを食べられるって、ありがたい」
と思えるか。
それとも、
「昔は普通に食べられたのに・・・」
と後悔するか。
その違いを作るのは、何か特別な一日ではなく、毎日の小さな習慣だと考えています。
健康寿命を考えるとき、運動や食事だけでなく、
「将来も自分の歯で食べられるだろうか?」
という視点を、一度自分自身を振り返ってみてはいかがでしょうか。
執筆者
あだち歯科医院 副院長 足立 圭亮
2014年明海大学歯学部 卒業
2019年朝日大学大学院歯学研究科 卒業 博士号(歯学)取得
2022年医療法人社団明星会 河出歯科医院勤務 (6月まで)
2022年あだち歯科医院 副院長(現在に至る)
