Column
フッ素は本当に安全?
2026.10.17
こんにちは!大垣市のあだち歯科医院です。
今回はフッ素についてお話しします。
フッ素塗布と聞くと子供の歯に塗布するものとイメージしている方が多いと思います。
近年、65歳以上の高齢者の方にもフッ素塗布を促す歯科医院も増えてきました。
改めて、フッ素とは?体に良いの?悪いの?
フッ素塗布に関するニュースがあったりするけど、本当に大丈夫?
そのような疑問を少しでも払拭できたらと思います。
フッ素は本当に安全?子どもから高齢者まで知っておきたい、
むし歯予防の正しい知識
「子どもにフッ素入りの歯磨き粉を使っても大丈夫ですか?」
診療をしていると、こうした疑問を持つ方がいらっしゃいます。
インターネットで調べてみると、「むし歯予防に効果がある」という情報がある一方で、「体に悪いのでは?」と不安になるような情報も見かけます。
大切なお子さんのことなら、なおさら慎重になりますよね。
また、ご自身の歯を長く残したいと考える高齢の方にとっても、毎日使う歯磨き粉の安全性は気になるのではないでしょうか。
では、実際のところ、フッ素は安全なのでしょうか?
今回は、フッ素がむし歯を防ぐ仕組みや、知っておきたいリスク、年齢に合わせた正しい使い方について、歯科医師の立場からわかりやすくお話しします。
そもそもフッ素とは?なぜむし歯予防に使われるのか
まず、歯磨き粉などに使われているフッ素について整理しておきましょう。
歯科で「フッ素」と呼んでいるものは、正確には主に「フッ化物」という形で使われています。
フッ化物は、適切に利用することで、むし歯予防に役立つ成分です。
では、どのように歯を守ってくれるのでしょうか?
私たちの歯は、食事をするたびに、お口の中の細菌がつくる酸などによって、少しずつミネラルを失っています。一方、唾液には、失われたミネラルを補う働きがあります。
このバランスが崩れ、歯が溶ける状態が続くと、むし歯につながります。
フッ化物には、主に次の3つの働きがあります。
1.歯の修復を助ける: 歯から失われたミネラルが戻る「再石灰化」を促します。
2.歯を酸に溶けにくくする: 歯の表面を、酸に対して抵抗性の高い状態にします。
3.むし歯菌の働きを抑える: 細菌が酸をつくる働きを弱めます。
つまり、フッ化物は単に歯を硬くするだけではなく、
むし歯ができにくい環境をつくる手助けをしてくれるのです。
ここで大切なのは、フッ化物を使えば絶対にむし歯にならない、というわけではないことです。
歯磨きや食生活、定期的な歯科健診などと組み合わせることで、予防効果が期待できます。
フッ素は本当に安全?知っておきたいリスク
「むし歯予防に役立つことはわかった。でも、体に入っても大丈夫なの?」
ここが、一番気になるところではないでしょうか。
結論からいうと、フッ化物は、年齢に合った製品を適切な量で使用することが大切です。
むし歯予防に有効な成分ですが、過剰に摂取すれば健康への影響が生じる可能性もあります。
例えば、子どもの場合、歯がつくられている時期にフッ化物を過剰に摂取し続けると、
「歯のフッ素症」と呼ばれる変化が起こることがあります。
これは、歯の形成期にフッ化物を過剰に摂取することで、歯の表面に白い斑点などが現れる状態です。
そのため、小さなお子さんには、年齢に応じた濃度と量を守って使用することが重要です。歯磨き粉をたくさんつければ効果も何倍になる、というものではありません。
一方で、こうしたリスクがあるからといって、フッ化物配合歯磨き粉を一律に避ける必要があるわけでもありません。
大切なのは、使い方を正しく理解することです。
また、高齢の方にもフッ化物は役立ちます。
年齢を重ねると、歯ぐきが下がり、歯の根元が露出することがあります。歯の根元は、歯の頭の部分と比べてむし歯になりやすいため、注意が必要です。
「もう年だから、むし歯予防はそれほど必要ない」と思われる方もいるかもしれません。しかし、残っているご自身の歯を長く守るためには、年齢に応じた予防が欠かせません。
飲み込みに不安がある方や、介護を受けている方は、誤嚥(ごえん:飲食物などが誤って気道に入ること)にも配慮しながら、歯科医師や歯科衛生士に使用方法を相談することも大切な事です。
子どもと高齢者では違う?フッ素の正しい使い方
フッ化物配合歯磨き粉は、年齢に合った濃度と使用量を守ることが基本です。
日本の歯科関連学会による2023年の推奨では、歯が生えてから大人まで、
年齢に応じた使用方法が示されています。
年齢 フッ化物濃度 使用量の目安
・歯が生えてから2歳
900~1,000ppm
米粒程度(1~2mm)
・3~5歳
900~1,000ppm
グリーンピース程度(約5mm)
・6歳~成人・高齢者
1,400~1,500ppm
歯ブラシ全体(約1.5~2cm)
※製品の表示や最新の推奨に従って使用してください。
子どもの場合は、保護者が歯磨き粉の量を調整し、必要に応じて仕上げ磨きをしてあげましょう。
歯磨き粉を飲み込まないように見守ることも大切です。
歯磨き後は、口の中に残った歯磨き粉を軽く吐き出します。
うがいをする場合は、少量の水で1回程度にとどめる方法が推奨されています。
成人や高齢者も、基本的にはフッ化物配合歯磨き粉を1日2回使用することが勧められます。
特に就寝前の歯磨きは、日々のむし歯予防の習慣として大切です。
高齢の方は、歯ぐきの下がりや歯の根元のむし歯にも気を配りましょう。
入れ歯を使っている方でも、残っている歯のケアは必要です。
ただし、飲み込む機能に不安がある場合や、うがいが難しい場合は、無理に同じ方法を続ける必要はありません。
お口の状態に合わせたケアを歯科医院で相談してみてください。
フッ素を使うかどうかより、大切にしたいこと
ここまで、フッ化物の働きや安全性、正しい使い方についてお話ししてきました。
フッ化物は、適切に使えば、子どもから高齢者まで幅広い年代のむし歯予防に役立ちます。
ただし、それだけですべてのむし歯を防げるわけではありません。
子どもであれば、仕上げ磨きや間食の取り方を意識すること。
高齢の方であれば、歯ぐきの変化やお口の乾燥にも注意すること。
そして、年齢にかかわらず、定期的に歯科医院でお口の状態を確認することが大切です。
フッ素について不安を感じたとき、危険か安全かという二択だけで考える必要はありません。
「どのような成分を、どのくらいの量で、どう使うのか」
そこを知ることが、ご自身やご家族の歯を守る第一歩になります。
毎日何気なく使っている歯磨き粉も、少し表示を確認してみると、新しい発見があるかもしれません。
お子さんの歯磨き粉の選び方や、ご自身のむし歯予防について迷ったときは、ぜひ当院にご相談ください。
正しい知識を味方につけながら、家族みんなのお口の健康を守っていきましょう!
<補足>
よくフッ素については、歯磨剤に含まれるフッ化物(我々がよく言葉で用いるフッ素)と工業用に使われるフッ素(フッ化水素酸:フッ酸とも言われます)を混同している方がいらっしゃいます。
フッ化水素酸は猛毒です。化学構造や性質が全く異なります。
過去に歯科医院で、フッ化水素酸を間違えて使用してしまい、痛ましい事故が起きました。
それ以来、どの歯科大学でも学生に対して、フッ化水素酸とフッ化物の違いについては教育を徹底しております(私も教育された一人です)。
歯科医師国家試験の問題でもこの内容は禁忌問題(その問題を間違えると他が成績よくても不合格とする問題)として用いられます。
つまり、この内容がわかっていないと歯科医師になる資格がないということですね。
フッ化水素酸が歯科医院で用いられることは、それ以来ほとんどなくなりました。
正しい知識をみにつけて、ご自身の歯の健康を保ちましょう。
執筆者
あだち歯科医院 副院長 足立 圭亮
2014年明海大学歯学部 卒業
2019年朝日大学大学院歯学研究科 卒業 博士号(歯学)取得
2022年医療法人社団明星会 河出歯科医院勤務 (6月まで)
2022年あだち歯科医院 副院長(現在に至る)
