Column
お口の健康と認知症
2026.05.31
こんにちは!岐阜県大垣市のあだち歯科医院です。
今回のテーマは「お口の健康と認知症」についてお話します。
― 今、歯科からできる予防医療 ―
① なぜ「お口」と「脳」が関係するのか
近年、認知症は高齢化社会における大きな健康課題として注目されています。
その中で注目されているのが「口腔環境」と認知機能との関係です。
歯科領域の研究では、歯の本数が少ない人や咀嚼機能が低下している人ほど認知症の発症リスクが高い可能性が報告されています。
食べ物を噛むという行為は、単なる食事行為ではありません。
咀嚼による刺激は脳血流を増加させ、脳の記憶領域を活性化させると考えられています。
つまり「しっかり噛める口」は、脳への良い刺激を日常的に送り続けている状態ともいえます。
歯を失うことは、栄養摂取の問題だけでなく、脳への刺激低下にもつながる可能性があります。

② 歯周病が全身へ及ぼす影響
もう一つ重要なのが歯周病です。歯周病は単なる歯茎の病気ではなく、慢性的な炎症性疾患です。
歯周病菌や炎症物質が血流を介して全身へ影響を及ぼすことが分かってきました。
近年の研究では、歯周病菌が脳内で検出されたという報告もあり、慢性炎症が認知症進行の一因となる可能性が議論されています。
もちろん歯周病だけで認知症になるわけではありませんが、「炎症を減らす生活」が脳の健康にも関係するという視点は重要です。
毎日の歯磨きや定期的な歯科受診は、単に虫歯を防ぐためではなく、全身疾患予防の一環として位置づけられる時代になっています。

③ 噛む力・食べる力が生活の質を守る
認知症予防では「栄養」「運動」「社会参加」が重要とされていますが、そのすべてに関わるのが口の機能です。
噛みにくくなると食事内容は軟らかい炭水化物中心になり、タンパク質やビタミン摂取が不足しがちになります。
結果として筋力低下やフレイルを招き、活動量低下が認知機能にも影響します。
2018年頃、国も保険診療の枠組みとして「口腔機能低下症」という病名を正式に設定しました。
その後口腔機能の低下が、将来的に生活の質に大きく影響することがわかり、医師や歯科医師側の認識の共有がなされてきています。
また、会話や笑顔も口の機能です。入れ歯が合わない、口が乾く、発音しにくいといった小さな問題が、人との交流機会を減らし、社会的孤立につながることもあります。
口腔機能を保つことは、単に「食べる」だけでなく、「人と関わり続ける力」を守ることでもあります。

④ 今日からできる認知症予防としての口腔ケア
認知症予防というと特別なトレーニングを想像しがちですが、実は日常生活の中に多くのヒントがあります。
・よく噛んで食べる(硬いものをたくさん食べることではない)
・定期的な歯科検診を受ける
・歯周病を放置しない
・合わない入れ歯を我慢しない
・口腔体操や会話を増やす
これらはすべて、歯科医院できる取り組みです。
人生100年時代において、「自分の口で食べ、話し、笑えること」は健康寿命を支える大きな要素になります。
お口の健康は、単独の問題ではなく全身、そして脳の健康へとつながっています。
認知症予防は高齢になってから始めるものではありません。
子どもから大人、高齢者まで、すべての世代において“口を守ること”が未来の自分を守る第一歩なのです。

⑤具体的にできることは
あだち歯科医院では、定期的なメンテナンス、虫歯・歯周病のチェックのほかに、口腔機能精密検査も実施することができます。
検査項目は7つ。
口腔衛生状態不良(舌苔の付着):舌の汚れ(舌苔)をチェックし、口の中の清潔さを判定します。
口腔乾燥:専用の機器(口腔水分計など)を使い、唾液の分泌量や粘膜の湿潤度を測ります。
咬合力低下:残存している歯の本数や、専用の感圧フィルムを用いて噛む力を測定します。
舌口唇運動機能低下:「パ」「タ」「カ」をそれぞれ5秒間発音し、1秒間に何回言えるか(滑舌・舌の動き)を測定します。
低舌圧:舌を上に押し上げる力を測定器(舌圧測定器など)で測り、飲み込む力を評価します。
咀嚼機能低下:専用の検査用グミを噛み、細かく砕ける能力を測定します。
嚥下機能低下:飲み込みに関する問診票(EAT-10など)を用いて、普段のむせや飲み込みにくさを評価します
これらは保険診療内で実施することが可能です。(50歳以上が適応です)
以下の症状がみられる方は一度検査し、自分の口腔機能がどのような状態か確認してみてもいいかもしれません。
・硬いものが噛みにくくなった
・口の中が渇く、パサパサする
・食べこぼしが増えた
・滑舌が悪くなった(「タ・カ・ラ」などが言いにくい)
・飲み込むときむせるようになった
人生100年時代と言われて幾分経ちますが、どの時期で人生を終了するかは誰にもわかりません。
全員が将来的に介護と関わるリスクをかかえています。
健康寿命を延ばすためにも、一度自分の口の健康状態を確認することは大切かも知れません。

